このほど世界保健機関(WHO)が明らかにした政策概要では、医療AIにおけるエイジズムやバイアスに対抗するための新しい戦略を提示している。
WHOが公開した「Ageism in artificial intelligence for health」によると、「AIは個人レベルだけでなく集団アプローチによる大幅なヘルスケア改革を実現し得る」とする一方で、「社会の潜在的なバイアスを複製し、既存ケアにおける格差を悪化させる可能性がある」と指摘する。人種・性別・社会経済的因子など、他の倫理的課題にも対処する必要があることを認めながら、今回の概要では、高齢者に影響を及ぼすバイアスに焦点を当てる。実際、高齢者はAIツールのトレーニングデータセットから除外されたり、市場調査や設計、検証から外れることがしばしばある。
これらに対処し、高齢者における医療AIの利点を最大化するための具体的戦略として、高齢者参加型AIデザイン、年齢構成を考慮したデータ収集、高齢者とこれを取り巻く医療者に向けたデジタルインフラの整備およびデジタルリテラシーへの投資、バイアス研究の加速、などを挙げている。なかでも、WHOは「多様な年齢層のデータサイエンスチーム」を提案しており、これは同領域における人的リソースの世代的な多様化と、能力開発を若年層に絞らない政策を導くことが考えられ、同政策概要に基づく今後の展開が非常に興味深い。
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