画像検査において、「本来の検査目的とは関係のない偶発的な所見」を認めることがある。このような偶発所見は検査報告書に記載されるが、依頼者は本来の目的への対処に集中するため、しばしば見過ごされてしまい、実際、このような見過ごしに伴う診断の遅れは、医療コストを押し上げている事実が示されている。例えば米国では、肺における画像診断のフォローアップ遅延を巡る訴訟解決に、年間4300万ドルが費やされているとの試算もある。偶発所見から発生する損害を予防可能とするため、また、偶発所見をトリガーとしたより効率的で精密な早期診断を実現するため、米イリノイ州拠点の医療グループ「Northwestern Medicine」では、偶発所見にアラートを発する独自のAIプログラムを構築し、課題の解決に取り組んでいる。
Northwestern Medicineの報告によると、同グループでは2020年12月以来、肺と副腎の所見を検索するために同AIを導入し、1年間に渡って前向き研究を行った。AIシステムは電子カルテに統合され、読影医によって肺の病変が確認されると、システムはそのメモを自然言語処理で検出し、検査を依頼した医師に警告を発するとともに、適切なフォローアップ検査をオーダーするためのワークフローを提示する。また、患者自身にもオンラインポータルサイトから画像検査の結果が通知される。AIシステム稼働の結果、570,000件以上の画像検査がスクリーニングされ、29,000件以上にフォローアップを勧告するフラグが立てられた。このことは、約5.1%という肺の所見発生率で、1日当たり約70件に相当する。検出された肺の所見は感度77.1%・特異度99.5%・陽性適中率90.3%であった。同研究の成果はNEJM Catalyst Innovations in Care Deliveryに発表されている。
Northwestern Medicineのインタビューに対し、先端技術部門の医療ディレクターであるMozziyar Etemadi医師は「我々のデータは、画像検査における偶発的な所見がいかに多いかを示しており、解決策の必要性を裏付けている」と語る。また、研究の主執筆者であるJane Domingo氏は「患者は“知らせがないのは良い知らせ”と考えやすく、医師から連絡が無いと全て順調だと思い込み、積極的なフォローアップを行わない傾向がある。患者への通知をプロセスに組み込むことで、自身を守る情報通の患者を生み、安全性をさらに高めることができる」と語っている。
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