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Ascenti Reach – 筋骨格系の危機に対応するバーチャル理学療法アプリ

COVID-19パンデミックを経てデジタルヘルスツールの利用が拡大する中、「バーチャルな理学療法サービス」が注目を集める。英国拠点のAscenti社が開発したアプリ「Ascenti Reach」は、首や腰など筋骨格系(MSK: musculoskeletal)の問題に悩まされる人を対象として、症状のデジタルトリアージ、24時間オンラインサポート、ビデオや教育記事による自己管理強化機能を提供する。パンデミックに伴う生活様式の変化で在宅勤務者は増加し、座りっぱなしにより身体活動レベルが低下するなど、MSKはかつてない高リスク状態にある。同社によると、MSK患者は年々増加傾向にあり、英国民保健サービス(NHS)にも大きな負担になっているという。

Ascenti Reachの効果を検証した社内レポートでは、アプリを利用した1,010名の首・腰・膝などMSK症状患者を12週間に渡って追跡調査した結果を明らかにしている。
「履行・遵守」はMSK患者にとって常に大きな課題で、先行研究では「最大70%が、処方された自宅での運動療法指示を守れない」との指摘もある。今回の調査では、回答者の約半数49%がアプリを週5回以上利用し、29%が週3〜4回利用していた。運動セッション利用は8週後で53.5%と、比較的長期に取り組みが維持されていた。
「臨床的効果」に関しては、運動機能の患者主観評価「Global Rating of Change(GROC)」によって、-5(非常に悪くなった)〜+5(非常に良くなった)で評価したところ、平均で2.1ポイントの改善がみられ、同尺度で定められた「臨床的に有意な改善」に該当した。
「疼痛」に関しては11段階の評価尺度「NRS」で、4週間利用者は初期評価値4.79から4週後に3.96へと改善、8週間利用者で4.72から3.24へと改善、12週間利用者で4.75から3.01へと改善と、アプリを長期に利用するほど大きな効果が観察された。
「理学療法士への24時間チャットサービス」は12週間で平均7.3通のメッセージが送信され、5回のワークアウトを行った人では1回あたり1.5通、100回のワークアウトを行った人では1回あたり0.18通まで減少し、経験や自信が増すほどに専門家サポートが不要になるという傾向を示していた。このことは、医療の効率性を高める上で重要な示唆となる。

本調査は、対照群を設けておらず、対面診療とバーチャル診療の直接比較がなされていないといった研究の限界はある。しかしこれらのポジティブな調査結果からは、バーチャル理学療法が従来の対面診療と同様の効能を維持しながら、効率性や費用対効果を高め、限りある医療資源への圧力を軽減する可能性が示されている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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