医療領域におけるAI活用は急速に進み、その大きな可能性に注目が集まるが、一方で医療AIに対する患者側の考え方について多くは明らかになっていない。米イェール大学の研究チームはこのほど、「医療AIに対する患者の見解」を調査し、その成果をJAMA Network Openから公表した。
チームの研究論文では、全米926人(女性471人、男性455人)を対象に調査を行った。半数以上の患者がAIの導入によって「医療が非常に良くなる」あるいは「多少良くなる」と考えていた。また、回答者の66%が「診断や治療」においてAIが「非常に重要である」と考え、29.8%は「やや重要である」と回答していた。年齢や人種・民族による、回答傾向の系統的な差は認められなかった。一方、医療AIに対する懸念事項としては、誤診(91.5%)やプライバシー侵害(70.8%)、医療費増加(68.4%)などが挙げられるが、なかでも興味深いのは「臨床医による診察時間短縮(69.6%)」で、患者は医師との対話時間が減少する可能性を危惧している事実が明らかとなっている。
また、AIに対する快・不快は臨床用途によって大きく異なり、例えば、AIが胸部X線写真を解析することについては、半数以上が「非常に心地よい」あるいは「やや心地よい」と回答したが、AIによるがん診断は、「非常に心地よい」あるいは「やや心地よい」は6.0%という低値にとどまった。さらに、人種的・民族的マイノリティグループの一員であると自認する回答者は、白人の回答者と比較して、これらの問題について「非常に懸念している」と回答する割合が高かった。
研究成果を受け、著者らは「医療AIの導入を計画する際には、患者教育・懸念・快適さのレベルを考慮する必要がある」と指摘した上で、「医療AIが臨床現場でより一般的になるにつれ、対処する必要がありながら研究者・開発者の盲点となっている部分を明らかにした」として研究成果の重要性を強調する。
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