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医療AI導入をどう評価すべきか? – 評価フレームワーク研究

AIを医療現場に導入する際、そのAIをどう客観的に評価するか。AI手法が用いられた検査画像の「見栄えの良さ」を評価するような従来の評価アプローチは誤解を招きやすく、臨床現場でのパフォーマンスと矛盾することもある。セントルイス・ワシントン大学の研究チームは「AIによる画像診断手法を客観的に評価するフレームワーク」を提案している。

セントルイス・ワシントン大学のリリースでは、学術誌 PET Clinicsに発表された同研究チームの論文を紹介している(全文はarXiv参照)。画像診断におけるAIの活用例としてPET-CT検査を対象とし、放射性トレーサーの低用量化や撮像時間短縮のためのAI手法などを挙げる。研究チームのフレームワークは、病変の検出や定量といったAIのタスクについて、民族・人種・性別・体重・年齢など条件が異なる患者をテストモデルとすることなどを提案している。このフレームワークは別モダリティの画像検査やタイプの異なるAI手法の評価にも適用可能という。

同論文は、AI研究者と現場の医師がどのようにコラボレーションするか、信頼できるAIの条件として何が優先されるか、課題に取り組む正しいアプローチ法を示唆している。研究チームのひとりで米国国立衛生研究所(NIH)で臨床データ科学担当主任を務めるBabak Saboury医師は「医療は、科学の知恵と最善のツールを用いた、思いやりのケアによる『アート』であることを、自分たちに常に言い聞かせることが必要だ。AIが医療の実践に役立つために重要な課題は信頼性の向上で、そのために本論文では厳密な評価フレームワークを提案した」と述べている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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