米ノースウェスタン大学の研究者らは昨年夏、世界初の可溶性ペースメーカーを公表した。これは完全な埋め込み型無線デバイスで、不要になると生体内で無害に分解されるというもの。同研究チームはこのほど、上半身に装着するワイヤレスセンサーと制御ユニットによってコントロール可能な、同ペースメーカーの新バージョンを明らかにした。
Science誌に掲載されたチームの研究報告によると、体外に装着する複数のセンサーは互いに通信し、体温や酸素飽和度、呼吸、筋緊張、身体活動、心臓の電気的活動などの生理機能を継続的にモニタリングすることができる。これらの複合情報は制御ユニットに統合されたアルゴリズムで解析することで、異常心拍を捉えるとともに「いつどのような速度で心臓を動かすか」を決定し、ペースメーカーを駆動させる。これらの情報はスマートフォンやタブレット端末に転送されるため、医師は容易に「重厚な患者モニタリング」を実現することができる。ペースメーカーとセンサー/制御ネットワークは、心臓手術後の一時的なペーシングが必要な患者、および永久ペースメーカーを留置する患者の両者に用いることができる。ペースメーカーは、ネットワーク内のノード(胸部にソフトに密着する小型デバイス)から無線でエネルギーを収集するため、ワイヤーやリード線などの外部ハードウェアは不要となる。
チームでバイオメディカルエンジニアを務めるJohn A. Rogers氏は「一時的心臓ペーシングにおいてこのシステムは、患者を病院から解放する。患者は自宅で快適に療養することができ、医師からの手厚い遠隔監視を受けることで安心感を得ることもできる。これらは、医療費の削減と急性期病院の空床確保にも役立つだろう」としている。
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