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Trialjectory – がん患者の臨床試験参加を促進するAIプラットフォーム

がん患者が臨床試験への参加で「新しい治療オプションを得ること」に前向きな意志を示す一方、手続きの煩雑さ、内容の複雑さなどのため、実際に臨床試験への登録に至る患者はごく少数に留まる。臨床試験情報を集める「ClinicalTrials.gov」のようなデータベースは、臨床試験と患者との直接のマッチング機能を提供しておらず、またトピックの高度専門性のために多くのがん患者にとって記載内容の理解は容易ではない。これらの課題解決を目指し、「Trialjectory社」はAIプラットフォームによる患者と臨床試験のマッチングに取り組んでいる。

Trialjectoryは、2022年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で、同社プラットフォームによる患者の臨床試験参加状況の改善効果を発表した。調査対象のTrialjectory登録者49,906名のうち、49,199名(98.6%)が何らかの臨床試験に適格となり、4,428名(9%)が実際に臨床試験への応募に至ったという。Trialjectoryは、65,000名以上のがん患者会員を有し、毎月4,000名が新規会員登録しており、これまでに100万件以上の臨床試験とのマッチング結果を提示してきた。「患者中心のプラットフォームによって、利用可能な治療オプションに対する患者自身の理解が促進される。知識を得た患者は、腫瘍科医と協力して意思決定を行うことができるようになる」と、同社は説明している。AI/機械学習は、個々の医師・患者だけではリーチできない膨大な情報を効率的にふるいにかけ、最適な臨床試験とのマッチングを成立させる役割を果たす。

TrialjectoryのCEOであるTzvia Bader氏は「今日の患者は、多くの治療選択肢を積極的に探し、腫瘍医に提示することで一緒に治療計画を策定するなど、がん治療の主導権を患者自身に取り戻そうとしている。Trialjectoryによる臨床試験アクセスへの民主化は、治験参加率を高めるだけではなく、結果として製薬会社の医薬品開発プロセスを加速させることにもなる」と語った

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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