米国人の45%が何らかの慢性疾患を有するとされるが、特に人種・民族的マイノリティは、白人成人と比較して3~6倍の有病率との推計もある。近年、このような健康格差解消に向けた取り組みに対して、米国政府からの研究資金拠出が増加している。
米フロリダ州ボカラトンに本拠を置くフロリダ・アトランティック大学(FAU)の研究チームは、マイアミ大学との協働により、「AIおよびIoT技術を活用した慢性疾患に関する健康格差是正プロジェクト」で、国立衛生研究所(NIH)から50万ドルの研究助成金を獲得したことを明らかにした。これは、NIHが推進する「Artificial Intelligence/Machine Learning Consortium to Advance Health Equity and Researcher Diversity (AIM-AHEAD)」と呼ばれる枠組みに含まれるもの。AIM-AHEADのプログラム目標は、現在「AI開発や関連コミュニティへの参加が十分でない研究者やグループ」の参画を強化することで、この新しい技術水準を向上させ、相互に有益で協調的かつ信頼できるパートナーシップを確立しようとする。
機関内のEHR(電子健康記録)データを研究利用しようとする場合、患者集団のプロファイリングと研究コホートの特定が可能な、適切な研究環境を確立することが課題となる。FAUの研究チームはこの課題に取り組み、AI/ML手法にこれらのデータセットを活用することを目的とした、地域社会に焦点を当てたEHRベースの研究プロジェクトを進める。FAUのJanet Robishaw教授は「現在、連邦政府認定のヘルスケアセンターや、健康格差の負担が大きい不利なグループで構成されるコミュニティセンターから得られるEHRデータは、AI関連の研究開発にほぼ用いられていない」と指摘し、格差影響を受ける集団における相当量のデータが埋没し、結果として格差を助長する可能性を示唆している。
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