医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究「筋肉内の脂肪蓄積」は健康リスクを示すか?

「筋肉内の脂肪蓄積」は健康リスクを示すか?

これまでにも「身体の特定部位における脂肪蓄積」を、疾患リスクと紐づけた上での体組成指標として測定する試みが行われてきた。「筋肉内脂肪蓄積(myosteatosis)」も健康リスクの新たな指標として注目を集めているが、無症候患者の健康リスク評価にどう役立つかは十分に解明されていない。ベルギーのルーヴァン・カトリック大学の研究チームは、CT画像からAIツールによって体組成指標を抽出し、筋肉内脂肪蓄積と死亡リスクの関係を明らかにした。

Radiologyに発表された同研究では、畳み込みニューラルネットワークの一種である「U-net」を用いて、無症候の成人が受けた大腸がん検診におけるCT画像から体組成指標を抽出し、8.8年(中央値)の追跡期間内における死亡率および心血管イベント発生率との関係を解析した。その結果、筋肉内脂肪蓄積は主要な有害事象リスクの上昇と有意な相関があり、死亡した研究対象症例の55%に同所見が認められていた。さらに、筋肉内脂肪蓄積の死亡リスクは、喫煙や2型糖尿病に関連する死亡リスクと同等であることも示されている。

研究チームでは今後、筋肉内脂肪蓄積が単に健康状態悪化を示すバイオマーカーなのか、それとも死亡リスクの上昇と直接の因果関係があるのかを明らかにしたいという。著者のMaxime Nachit博士は「興味深いことに、筋肉内脂肪蓄積と死亡リスクの関連性は、加齢や肥満の指標とは無関係であった。つまり、筋肉内脂肪蓄積は、単なる高齢や、他部位への脂肪の過剰付加では説明できないことを意味する」と指摘している

参照論文:

AI-based CT Body Composition Identifies Myosteatosis as Key Mortality Predictor in Asymptomatic Adults

関連記事:

  1. NuraLogix社「Anura」の新機能 – 顔の動画撮影から脂肪肝を予測
  2. 深層学習による脂肪肝評価でCOVID-19重症化を予測
  3. 腸内細菌叢から「非アルコール性脂肪性肝疾患発症」を予測
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事