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脳刺激が記憶力や集中力を高めるのか?

非侵襲的に脳に電流を流すことで、記憶力や集中力といった「人の精神機能」を向上させることができるかどうかについて、長年に渡り議論が繰り返されてきた。米マサチューセッツ州に所在するボストン大学認知・臨床神経科学研究所のチームは、経頭蓋交流電流刺激(tACS)の効果を評価する100以上の研究を対象に、この技術が有望かを定量化するためのメタアナリシスを実施した。

Science Translational Medicineから公開された研究論文によると、メタアナリシスの結果、tACS治療は注意力や長期記憶、ワーキングメモリー、新しい情報を処理し問題を解決する能力、およびその他の高度な認知プロセスに中程度の改善をもたらすと結論付けている。認知神経科学者で、この論文の著者であるShrey Grover氏は「少なくとも短期的には、精神機能に大きな変化をもたらす」として、技術の高い臨床効果に言及している

論文中では、電流が脳内をどのように流れるかをシミュレーション予測することにより、電極をより効果的なパターンで配置できるようになっていることも報告しており、刺激パターンや電極配置について最適化を図る機械学習アプローチも今後検討の進むことが予想される。

参照論文:

A meta-analysis suggests that tACS improves cognition in healthy, aging, and psychiatric populations

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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