母体の妊娠経過は、妊娠糖尿病などの母体合併症だけでなく、出生後の児の健康にも影響を及ぼす。しかし、従来の予測モデルは特定のアウトカムを個別に扱うものが中心であり、母体と児の診療情報を妊娠中から出生後まで統合して解析することには課題があった。こうした背景から、中国の研究チームは、電子健康記録(EHR)を用いて母子の健康リスクを予測するAIモデル「MoChiFormer」と、予測結果に基づき医療情報を提示するAIエージェント「MoChiAgent」を開発し、その成果をNature Medicineに発表した。
MoChiFormerは、母体と児のEHRを時系列で解析するTransformerベースの予測モデルである。440万件を超える診療記録を用いて開発され、母体約26万件、乳児約2万件の独立した診療記録で外部検証が行われた。母体における胎盤早期剥離、前期破水、早産の予測におけるAUROCは、それぞれ0.89、0.89、0.91であった。また、母体のリスク因子を組み合わせて解析した結果、特定のリスクパターンを示す母親から出生した児では、新生児黄疸の発症リスクが2.81倍、血液疾患のリスクが2.83倍高かった。さらに、母体の妊娠中のEHRに出生後の乳児記録を加えることで、染色体異常や呼吸器疾患などの予測性能も向上した。
本研究は、母体と児の診療情報を統合し、母体の妊娠経過と出生後の児の健康との関連をAIで解析した点に意義がある。研究者らは、「MoChiAgentが母子のリスクに応じた診療において、医師の判断を支援する有用な情報を提供できる可能性がある」と述べている。一方で、本研究は主にEHRを用いた後ろ向き研究であるため、AIによる予測が実際の診療や患者のアウトカム改善に結びつくかどうかについては、今後の前向き研究による検証が必要である。
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