血液悪性腫瘍の治療においては、患者の治療歴や遺伝子異常、併存疾患、最新の診療ガイドラインや臨床試験の知見など、多様な情報を統合した専門的な治療方針の決定が求められる。一方で、このような高度な意思決定をすべての医療機関で行うことは容易ではなく、診療格差が課題となっている。ドイツの研究チームは、血液悪性腫瘍における臨床意思決定支援を目的として、大規模言語モデル(LLM)を活用したAI診療支援システム「HemaGuide」を開発・評価し、その成果をNature Medicineに発表した。
HemaGuideは、診療記録、治療歴、検査結果、遺伝子情報などをAIが解析し、血液悪性腫瘍の治療方針を提案するシステムである。入力された症例情報は構造化され、3つの解析モードで評価される。Guideline modeでは疾患別の診療ガイドラインを参照し、Advanced modeでは2,000例以上の実臨床キャンサーボード症例を蓄積したデータベースから類似症例を検索する。さらに、Molecular modeでは遺伝子変異の臨床的意義を評価し、これらの情報を統合して根拠を示しながら治療選択肢を提示する。研究チームは複数のLLMを用いてHemaGuideを評価し、外部施設および前向き評価において、キャンサーボードの判断との一致率はそれぞれ81.8%、82.8%を示した。模擬診療研究では、単独で約60%だった専攻医の一致率が、HemaGuide併用により指導医に匹敵する水準まで向上した。
本研究は、AIが医学知識の検索にとどまらず、実臨床症例や診療ガイドラインを統合し、個々の患者に応じた治療判断を支援できる可能性を示した点に意義がある。一方で、症例とガイドラインは単一施設由来であり、検証施設もいずれも欧州の高度医療機関に限られる。電子カルテ連携は未実装で、前向き検証も64症例・1か月と小規模である。多施設・多地域での検証と、患者アウトカムの改善につながるかの評価が今後の課題となる。
参照論文:
Clinical decision support in hematological malignancies using a case-grounded AI agent
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