原発性アルドステロン症(PA)は、二次性高血圧の主要な原因の一つである。従来、スクリーニングには1981年に登場したアルドステロン/レニン比(ARR)が標準的に用いられているが、薬剤の影響や偽陽性の多さが臨床上の課題となっている。ドイツを中心とした研究チームは、PAのスクリーニング精度向上を目的として、ARRに依存しない多変量解析アプローチを用い、PAと原発性高血圧を鑑別する機械学習モデルを開発・検証し、その成果をnpj Digital Medicineに発表した。
モデルにはランダムフォレストなどの機械学習手法が用いられ、13種のステロイド、血清カリウム、レニンを候補特徴量として6種のアルゴリズムを比較し、TRIPOD+AI準拠で独立コホートによる外部検証を行った。最も興味深い所見は、レニンを使わない「レニン非依存モデル」が最良だった点である。ステロイドに血清カリウムを加えるとAUCは0.917から0.940へ改善したが、レニン追加による上乗せはごくわずかで、特徴量重要度でもカリウムがレニンを上回った。さらにレニン非依存モデル(FNN・MLP・SVM)は降圧薬の休薬前後で性能が変わらず、レニン依存モデルは休薬なしで有意に低下した。ARRの構造的な弱点を回避できることになる。外部検証でのAUCは0.948〜0.954で、ARRの0.839を有意に上回った。感度は約90%前後を維持しつつ、ARRと比較して偽陽性率は約50~70%低減した。
本研究は、ARR中心の単一指標評価から、ステロイド系ホルモンを含む多次元情報と機械学習を組み合わせた新たなスクリーニング戦略を提示した。著者らは「本モデルは従来のARRベース戦略を補完または代替し得る可能性があり、特に偽陽性を減らして不要な精密検査を回避できる点に臨床的価値がある」と述べている。一方で、質量分析法によるステロイド測定へのアクセスの制限、検査コスト、測定系の標準化が臨床実装に向けた課題である。
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