皮膚がんを検出するAIの実用化が世界各所で進んでいる。欧州最大級の応用研究機関「フラウンホーファー研究機構(Fraunhofer-Gesellschaft)」の支援情報通信ソリューションセンター(AICOS)において、スマートフォンで撮影した皮膚病変写真に基づくAI画像解析システム「Derm.AI」プロジェクトが進行中である。
フラウンホーファーAICOSはポルトガルに拠点を置き、Derm.AIによって同国の健康保険制度のなかで皮膚科の遠隔診療プロセスに変革をもたらそうとしている。ポルトガル保健省らと共同開発されたDerm.AIのモバイルアプリは、最初のステップで、一般開業医(GP)がスマートフォンで皮膚上の問題部位を撮影する。システムによって写真の正しい配置・距離・解像度が確認され、近景と遠景の2枚を撮影し、標準化された写真が生成される。GP診療所で得られた画像はオンラインで皮膚科に送信され、AIが病変部に「正常」「優先」「優先度が高い」といったラベルづけを行う。AIが高リスクと判断した画像に対し、病院の皮膚科医がチェックして、その患者を担当するGPに遠隔診療でフィードバックするか、病院での診察を予約することができる。
フラウンホーファーAICOSのシニアサイエンティストであるMaria Vasconcelos氏は、AICOSのインタビューに対して「近年、GPは皮膚がんの早期発見に関心を寄せているが、専門医が少ない地域では最初の診察予約までに時間がかかり、患者が診察のために長距離を移動することもよくある。そのような状況でDerm.AIの出番となる」と述べた。
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