米サウスカロライナ医科大学(MUSC)とクレムソン大学は、生体医工学へのAI応用における研究能力向上と協力体制を構築する提携関係「Clemson-MUSC AI Hub」を構築している。このAIハブが主催した本年のパネルディスカッションでは、「ヘルスケアにおけるAIの位置付け」をテーマに興味深い議論が展開された。
ディスカッション内で、自身も数年前より「先天性心疾患から糖尿病性眼症まで様々な医療AIプロジェクト」に取り組んでいるG. Hamilton Baker医師は「AIに関する教育の必要性を強く感じている。臨床医にコードの書き方を学べというわけではなく、単純にAIが我々にどう役立つか学んで欲しい」と語った。同会議では特に「AIとバイアス」に話題が集中した。臨床医の中には、AIの最もエレガントな側面として「本来的にバイアスを持たないコンピュータに計算を任せ、医師は治療に専念することで、意図せぬバイアスを取り除くことができる」と考える者もいる一方、「AIのプログラム自体は人間が設計したもので、意図せぬバイアスはほぼ間違いなく散りばめられている」と強く主張する者もいた。「説明できない医療AI」を利用するかというテーマには、Baker医師が「皮膚の外用クリームの話なのか、脳の手術の話なのかによるだろう」と、意思決定のリスク次第でAIに対する臨床医の受容性が変わる傾向について説明した。
会場内で意見の相違がありながらも、「AIが医療分野にとって非常に価値のあるツール」であることには同意が得られており、MUSCのJihad Obeid医師は「AIを”意思決定者”ではなく”意思決定支援者”として使うならば、AIは本物の資産となる」と語った。会の結びに、主催者のBaker医師は「ヘルスケアにおけるAIというと、誇大に語りたくなる。しかし、AIが大きな違いをもたらすことが出来る平易でスマートなプロジェクトは多くあり、そこにたくさんの人々が参加することが必要だ」と述べ、臨床医に対しても、研究助成金など多くのリソースを提供するAIハブへの幅広い参加を呼びかけた。
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