機序の分からない薬を医師が処方できないように、学習データの質やアルゴリズム選択の妥当性を理解できなければ医療AIを適切に運用することは難しい。医療にAIが台頭する時代、医療者にも強力なIT知識が求められようとしている。一方、個人の医療情報の多くは既に電子化されており、これを取り扱う医療者に最低限の危機管理意識と周辺知識さえなければ、進展ははるか手前で大きく頓挫してしまう。
Press-Telegramが先週報じたところによると、米カリフォルニアの退役軍人病院に勤める医療スタッフたちが、社会保障番号を含む患者データを私用のEメールなどでやり取りしていたという。内部調査によると、安全性の低いデータ通信手段を利用していたことにより、133名の患者データが第三者に容易に盗み見られる状況にあった。事態は2013年から2017年まで継続していたとのこと。
この種のトラブルは、スタッフの危機管理意識の低さが問題の本質ではあるが、それと同時にデータの取り扱いに関する背景知識の欠如を伴うことが多い。医療AIが大規模な展開をみせるなか、まずは医療スタッフの最も根本的なITリテラシーに目を向けることが実は欠かせない。