アラブ首長国連邦(UAE)は先端技術の利用に際し、非常に柔軟かつ積極的な取り組みを展開してきた。2017年、世界に先駆けてAI担当大臣を据えたことは大きな話題となったが、1990年生まれのOlama大臣は現在、同国の強力なAI戦略の象徴的存在ともなった。
UAEが政府公式サイト上や政府公認メディアで示すAI戦略は多岐に渡るが、なかでも
– 医療やセキュリティサービス分野へのAIの完全な統合
– AI利用による政府支出の半減
– 100万人以上のAI人材を育成
などが目を引く。これらを絵空事に終わらせることはなく、大規模な人的・物的リソースを要していた「ビザ取得や就労などに必要となるメディカルチェック」においては、AIとロボットによる自動化を今年実現した(過去記事)。また、政府によるスタートアップ支援は功を奏しており、医療AI分野においてもイニシアチブを取ろうとする同国企業が多数存在する。
UAEは優秀な学生を世界中から集めるため、大学授業料の無償化や手厚い奨学金システムなどを多数提供する。世界初となるAI特化の研究志向型大学院も昨年開学した。機械学習や自然言語処理、コンピュータビジョンに関するPhDおよびMScコースを展開する。学費負担のないことに加え住居も提供されることから、大学院レベル教育は米国・英国などに求めることの多かったコンピュータサイエンス領域の構図を大きく書き換える可能性がある。10年先の立ち位置を確かに見定め、UAEは具体的で実効性のある戦略を日々推し進めている。