米メイヨークリニックは、医療イノベーションの実現に野心的であり続ける。2030年までにケアの提供方法を抜本的に変革することを目指した幅広い提言を行っているが、その中核を担うものがAI技術となる。患者情報の活用が前提となる技術革新を前に、メイヨークリニックは多くの企業との提携関係を構築し、患者情報の提供を進めてきた現実がある。
米医療メディアSTAT Newsが3日報じたところによると、過去2年間でメイヨークリニックとの契約によって患者データにアクセスした企業は16社にのぼるという。これらの提携によって同クリニックは収益の流れを広げただけではなく、多くの新しい医学的知見の導出と有用なプロダクトの生成に成功している。一方で、倫理の専門家は「患者情報の取り扱い」に対して常に厳しい目を向けてきた。
メイヨークリニックは「技術革新とプライバシーの保護が排反ではない」ことを強調し、患者情報の厳格な管理体制を明確にしている。ただし、一部企業との契約に関しては、契約上の機密規定を理由としてデータ共有の手段についての情報を公開しておらず、このことが社会的な批判を引き起こすきっかけともなった。ミシガン大学の生命倫理学者であるSpector-Bagdady氏は「スマートフォンGPSやSNSへの投稿など、他のデータセットとの組み合わせによって個を特定できる可能性がある」ことを指摘し、患者情報の匿名化に「完全なものは存在しない」ことを強調する。