大麻は毒か薬か?

大麻に含まれる生薬成分を医療に利用する『医療大麻』は常に論争の種となっている。鎮痛や鎮静など薬として有益とする意見をもとに、「処方箋不要で合法」あるいは「医師の許可に基づき合法」とされる国や地域がある。一方で、大麻にまつわる負のイメージや、医療的な価値がないとして、使用・所持・流通を禁止する国も多い。日本も『大麻取締法』による医療利用を含めた規制が強い。そのような世界情勢のなか、植物由来の薬の分析に重点を置いた米国IoT企業『RYAH Group』が医療大麻データの分析にAIを使用する米国特許の取得を発表し、臨床試験を進めている。

GLOBE NEWSWIREによると、同特許はAIによるビッグデータプラットフォーム処理で、大麻の植物株と医療適応との相関を識別するものという。37種類の疾患を対象とし、匿名患者データを研究目的に利用できる。医療大麻の処方プロセスは、非効率で有益性が不透明との指摘が多い。医療大麻の市場はデータ主導型の意思決定に移行している途上である。医療者と患者の両方にとって合理化され、信頼を得ることで、規模の拡大と成長が起きるかもしれない。

オピオイド乱用(過去記事)の社会問題を抱える米国では、医療大麻の正しい利用でその隙間を埋める効果を期待する論調もある。一方、日本国内では、薬としての需要が未知である。そのうえ、強い法規制で医療大麻は研究目的でも壁が極めて高い。国内での臨床試験が皆無のなか、海外の成果によっては、治験に踏み切る可能性もわずかに残る。AIを核とした革新がひとつのきっかけとなるのか、それとも大麻の規制は妥当とするカウンター活動が起きるのか。医学の進展と医療政策をめぐる大局的観点からも興味が尽きない。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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