医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例Triple W社「Dfree」尿失禁対策デバイスで世界進出する日本発スタートアップ

Triple W社「Dfree」尿失禁対策デバイスで世界進出する日本発スタートアップ

尿失禁は全世界で2億人に影響を及ぼしているとの推算がある。老若男女、様々なタイプの尿失禁症状があり、明確な原因がつかめないことも少なくない。手術・機器埋め込み・電気刺激・薬物療法という強い手段にためらう患者もみられ、現実的な対処はオムツと尿とりパッドとなる。非侵襲的で安全なデジタルウェアラブルデバイスにより、尿失禁を抱える人々をサポートする製品を日本から世界に展開するスタートアップがある。

米メディアHME Businessで報じられている、Triple W(トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社)の製品「Dfree」は、患者の下腹部に小型の超音波装置を固定し、膀胱内に溜まった尿のレベルをBluetoothでスマートフォンに送信する。失禁が起きる前に通知する技術はシンプルでありながら堅実である。膀胱が拡がる柔軟性、失禁が発生するタイミングと尿量との関係には個人差があるため、超音波センサーが測定した尿量は空っぽのゼロから満杯の10までの数値に変換されており、通知を受け取るしきい値を個別に設定する。データ集積とAIで排泄タイミングを予測する機能拡充の計画もあるという。高齢者施設を例にとると、トイレのケアにスタッフの時間の30-40%が消費されるともいわれている。同製品が失禁を予防すればスタッフの時間はもとより、オムツやパッド、ベッドリネン交換に要するコスト削減も期待できる。そしてなにより自力での排泄は、個人の尊厳において極めて重要な位置を占める。

ヨーロッパ、そしてアメリカに進出している同製品は、2019年1月の米国エレクトロニクス製品展示会CES、直近では9月にドイツ開催のIFA 2019(過去記事)で、日本のスタートアップとして存在感を示す。HME Businessのインタビューに対して、Triple Wのマーケティング・ビジネス開発担当の高柳氏は「失禁という事故に遭い、何度も繰り返し人々は自信を失います。外出を止めたり、極端な例では水を飲むのをやめてしまう。私たちのデバイスで、人々がアクティブなライフスタイルを取り戻し、自信と尊厳を取り戻せることを目指しています」と語った。

TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事