米ハーバード大学が運営する公式ニュースサイトで「The Harvard Gazette」というものがある。同大学の取り組みや関連情報だけでなく、サイエンスにおけるイノベーションを掘り下げた特集記事などを取り扱い、読み応えのあるメディアとなっているためThe Medical AI Times編集部も愛読している。このThe Harvard Gazetteに11日、「AI revolution in medicine」と題した興味深い記事が公開されているのでここで紹介したい。
同記事は、次世代に果たすAIの役割とその落とし穴を調査するシリーズの3番目と位置付けられる。今回は医学におけるAIが持つポテンシャルとリスクについて、ハーバードコミュニティの高度専門知識を紡いだ総説を提供している。生物医学情報学分野のMarion V. Nelson教授は「既に医療AIは特定の医学分野では止められない列車となっており、真の専門家レベルのパフォーマンスに到達している」と話す一方、AIの潜在的リスクはあまりにも巨大であることを指摘する。文化的偏見を反映するデータセットからトレーニングされたアルゴリズムには大いなる死角が組み込まれ、金儲けを意図して設計されたAIはコスト削減ではなく増加させる可能性さえ持つ。
直近10年間において医療におけるデータ量も指数関数的に増加した。「心理学領域の考えでは、人間は4つの独立変数を同時に処理できるが、5つ目になると途端に分からなくなってしまう」と生命倫理を専門とするRobert Truog教授は話す。AIは絶好のタイミングでやってきた。それはつまり、AIが医療データの過負荷から我々を救い出す可能性もあるからだ。これから10年、医療が大きく様変わりすることは間違いない。ただし、10年後にAIをどのように評価できるかは、まさにこれを取り扱う一人一人の手に委ねられている。