22番染色体の微小な欠失は約4,000人に1人の頻度で存在し、思春期以降に統合失調症などの精神疾患発症につながる可能性が指摘されている。しかし、実際に精神疾患の罹患に至るのはその3分の1程度と試算され、潜在的な高リスク者の識別は容易ではなかった。このような子ども達における「将来的な精神疾患発症リスク」を検出するため、ジュネーブ大学(UNIGE)のチームはAIツールを用いた研究を行っている。
UNIGEの29日付プレスリリースでは、オープンアクセス誌 eLifeに発表された同AI研究を紹介している。対象要因間の接続関係を視覚化するネットワーク分析を用い、22番染色体の微小欠失を持つ70名の子どもを対象に、小児期から大人になるまでの観察で得られた40の変数を考慮してアルゴリズムを構築した。変数には、幻覚・気分・罪悪感・ストレス管理法のほか、両親からのアンケート調査記録などの要素が含まれている。その結果、評価時点から3年後の心理的問題の発生を予測する重要な変数をネットワーク分析によって明らかにした。本研究成果により、「不安を抱えた子どもが、思春期になってストレスに対処できなくなると精神疾患を発症する」という典型例が浮き彫りとなった。
精神疾患の発症は染色体のような神経生物学的なものだけではなく、環境要因を含む多くの因子に依存するため、関連性の高い素因をどう見極め、リスクの高い子どもに適切な早期介入をどう実現するかがポイントとなる。精神疾患発症を予測することのみならず「それぞれの子どもに特有となる発達の軌跡を解析するAI手法のユニークさ」を研究チームは強調している。
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