医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究卵巣腫瘍の術前MRI画像診断精度を高める新たなAI手法

卵巣腫瘍の術前MRI画像診断精度を高める新たなAI手法

「上皮性卵巣がん(MEOTs)」は5年生存率が35%程度とされ、婦人科領域で最も予後の悪い悪性腫瘍のひとつである。一方、MEOTsと鑑別される「境界悪性卵巣腫瘍(BEOTs)」は5年生存率が92%程度と、比較的良好な予後を持つ。そのため、BEOTsとMEOTsを手術前に画像検査から正確に鑑別診断できるかどうかで、妊孕性と卵巣機能維持のために保存的治療の選択肢を残すか、あるいは徹底的な外科治療と化学療法を組み合わせるか、治療戦略の重要な分かれ目となる。

中国科学院の蘇州生物医学工学技術研究所(SIBET)では、術前MRI検査に新たなAI手法を導入し、それら2種の腫瘍をより精度高く鑑別する研究を行っている。中国科学院のリリースでは、学術誌 Artificial Intelligence In Medicineに発表された研究成果を紹介している。本研究で用いられた「MAC-Net」は、従来手法のマルチインスタンス畳み込みニューラルネットワーク(MICNN)に加えて、モダリティベースアテンション(MA)とコンテクストミルプーリング層(C-MPL)を適用することで、既存手法の欠点を克服している。MAは臨床医の意思決定パターンからの学習で別モダリティの重要性を認識し、C-MPLは腫瘍分布に関する強力な事前知識を導入することで隣接画像を正確に評価・予測することを可能にする。この結果、MAC-Netの診断性能はAUC 0.878を達成し、既存のMICNN手法を上回った。

研究チームを率いたJIAN Junming氏によると「これまでBEOTs/MEOTsの鑑別は読影専門医の経験への依存度が強く、主観的で時間がかかり、精度も74〜89%と比較的低かった」と臨床上の課題を説明している。MAC-Netは、MRIのみならずCTやPETなどの他画像検査にも拡張可能で、卵巣がん以外にも肺がん・肝臓がん・大腸がん・乳がん・前立腺がんなどあらゆる固形腫瘍の診断に利用可能として、今後の研究が期待されている。

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1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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