COVID-19パンデミックは、顧客の経済活動を停止・削減・延期させ、企業経営のリスクを顕在化した。現在、企業が顧客との関係性強化に利用できるAIとして「チャットボット」「フェイクレビューの特定」「顧客ターゲティングの改善」などが挙がる。英国のアングリア・ラスキン大学のチームは「COVID-19パンデミックにおけるAIアプリの使用が、中小企業のビジネスリスクを低減させた」という研究成果を発表している。
Information Systems Frontiersに収載された同研究では、ロンドン拠点の中小企業317社を対象として、パンデミックにおける各種ビジネスリスク(人材確保、勤務形態、業績、パートナーシップ)を、国際労働機関(ILO)の定義した60項目のリスク尺度に従って検証した。調査の結果、「AIアプリの利用がパンデミック時のリスクを3.1%低減させる」ことを明らかにしている。その内訳として、「パーソナライズされたショッピングを提供するAIアプリ」がビジネスリスクを2%低減し、「オンラインで顧客をターゲティングするAIアプリ」がリスクを1.2%低減させることに寄与していた。
また本調査において、「小規模」企業でAIアプリを利用しているのは全体の26%にとどまり、「中規模」企業での70.4%と比べ明らかな差があった。アングリア・ラスキン大学のインタビューに対して、同大の多元主義経済学センター長であるNick Drydakis教授は「AIアプリがCOVID-19パンデミックという未曾有の状況への適応に役立ち得るという今回の成果は、中小企業の規模・売上高・操業年数に関わりなく一貫していた。つまり、現在AIアプリを利用していない4分の3の小規模企業にとって、AIアプリへの設備投資は賢明な方法である」と語っている。
関連記事: