腕の切断手術を受けた患者が用いる義肢・義手において、現在市販されているものとしては、肩部や胸部を動かして制御するもの、残った筋肉の動きをセンサーで拾い動作するもの、などがある。しかし、いずれのアプローチも「手や指を動かそう」とする直感的な脳の命令とは異なるため、動作方法の習得には専門的訓練が必要になるという課題があった。
米ミネソタ大学の研究グループは、腕の筋膜内に埋め込んだ微小電極から末梢神経信号を取得し、手を動かそうとする脳の命令だけで操作できるロボットアームを開発している。最新の研究成果はJournal of Neural Engineeringに掲載されている。ディープラーニング技術を用いた「末梢神経信号に基づくロボットアームの指の制御」は、95-99%という高精度で、かつ50-120msという低遅延を達成した。2012年から始まった本プロジェクトは、米国防高等研究計画局(DARPA)からの資金提供を受け、実際の上肢切断患者を対象とした臨床試験を実施し、成果を重ねてきた。
研究チームのJules Anh Tuan Nguyen博士は「我々の研究は、市販のどのシステムよりも遥かに直感的なものだ。他の義肢では、指を動かそうとするときにシステムが読み取るのは腕の筋肉で、そのために患者は腕の筋肉を動かす。我々の技術は、神経信号を直接読み取るため、患者の意図を知ることができる。指を動かしたいのなら、その指を動かそうと考えるだけでよい」と解説する。現在は、外付けのAIインターフェースおよびロボットアームへの接続のため、皮膚にケーブルを通す必要があるが、チップからリモート接続できるようになれば、「車や電話などあらゆるデバイスを脳の命令で操作できるようになる」と、チームでは技術のさらなる応用も期待している。
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