インド政府は、同国におけるAI関連支出が2025年までに117.8億ドル(1.76兆円)に到達することを見込むとともに、2035年までには国内経済に1兆ドルを上乗せすることを推算する。この主要な舞台の1つとなるのは、深刻な専門リソース不足が続くヘルスケア領域でもある。
世界平均では人口10万人あたり150人の医師が存在するが、インドでは10万人あたり64人と医師不足が顕在化しており、特に農村部における深刻な人材不足は社会問題となっている。医療提供体制が貧弱な非都市部での機能拡張のためには、AIツールを活用した診療支援が効果的となる可能性がある。インド政府関連の公共政策シンクタンクであるNITI Aayogは、糖尿病合併症の早期発見のため、プライマリーケアにおけるAI適用を検証している。AIスクリーニングツールがその好例で、網膜評価においてはAIと眼科専門医の診断精度を比較する臨床試験に取り組む。ポータブル検診機器にAI機能を統合することで、眼科検診能力を向上させ、医療過疎地域におけるケアアクセス改善を図るものだ。
また、インド工科大学とTata Medical Centerが立ち上げた、インド初の非識別化がん画像バンクである「Comprehensive Archive of Imaging in Oncology」も大きな注目を集めている。高品質の非識別化画像の収集と活用により、機械学習モデルによるバイオマーカーの検出を容易にし、がん研究推進を積極的に後押しする。インドは「ヘルスケアの抜本的改革の要」としてもAIに注目しており、重点的な投資による技術成長と社会実装を進めている。
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