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「痛風とメンタルヘルスの関係」をソーシャルメディアから解析

高尿酸血症(痛風)は足の関節などに強い痛みをもたらす疾患で、血中尿酸値の変動や尿酸の結晶化が誘因となる。痛風に関する興味深い知見として、うつ・不安などメンタルヘルスへの疾患影響が示唆されてきた。米Global Healthy Living Foundationの研究グループは、ソーシャルメディアの投稿内容に自然言語処理を用い、痛風患者とメンタルヘルスとの関係性を調査している。

米国リウマチ学会(ACR)2022年次総会のポスターセッションで発表される同研究では、ソーシャルメディアの「Facebook」および「Reddit」を対象とし、痛風患者グループの内部で投稿されたメンタルヘルス関連のコメントを、自然言語処理で抽出・解析している。その結果、メンタルヘルス関連の発言は全体の約4%に相当し、そのうちストレス関連が38%、うつ関連が22%、不安関連が16%であった。日常のプライマリーケアよりも、救急医療に関する話題でネガティブな言葉が多く用いられ、救急医療では全単語の11%が「fear(恐怖)」に類する単語と結びつけられた。一方、プライマリーケアでは全単語の6%が「trust(信頼)」と結びつけられていた。

精神的問題が痛風と重なるのには、疼痛が精神的苦痛を引き起こすこと、慢性疾患を抱えて生活する心理的負担など、いくつかの理由が検討されてきた。しかし、その背景および医学的機序についてまだ十分に理解されておらず、従来型アプローチでの解明は容易ではない。研究チームは「ソーシャルメディア上の情報をAIシステムで処理することは、メンタルヘルスと疾患との交差点を解明する上で非常に有益である」と論じている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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