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機械学習による「救急頻回受診予測」の改善

「救急外来の頻回利用」は、入院や死亡のリスク増加が指摘されてきた。頻回利用の背景には複雑な患者ニーズがあり、先行研究ではこれらの要因はロジスティック回帰モデルを用いて評価されることが主であった。カナダ・ラヴァル大学などの研究チームは、機械学習モデルを用いることで、古典的アプローチに比して「頻回受診予測」を改善できる可能性があることを明らかにしている。

Scientific Reportsから3日公開された研究論文では、カナダ・ケベック州の慢性疾患患者を対象として、救急外来の頻回利用を予測するためのロジスティック回帰モデルについて、新たに構築した複数の機械学習モデルとその性能を比較している。45万人を超える救急受診者のうち、43,151人が年間3回以上、13,676人が年間5回以上の受診を認めた。これらの予測において、ランダムフォレストは最も低い性能を示したが、他のモデル(勾配ブースティング、ナイーブベイズ、ニューラルネットワーク、およびロジスティック回帰)はほぼ同程度の性能を示し、機械学習モデル群がわずかに上回っていた。なお、最も高い説明力を持つ変数は「前年の救急外来受診回数」だった。

チームは「どのモデルも他を凌駕するものではなかった」としつつも、アルゴリズムの革新により予測は改善に向かう可能性が示唆されたとし、同領域における機械学習の潜在的有効性を指摘する。

参照論文:

Machine learning to improve frequent emergency department use prediction: a retrospective cohort study

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