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米Epic社レポート – 保険制度改革の一方で肥大化する医療記録

2021年米国では、医療従事者の文章作成負担を軽減するため、医療費請求コードに関する制度変更が実施された。米Epic社の調査によれば、制度変更から2年が経過した現在も医療記録における文書量は増加傾向にあるという。

同レポート内では、2020年5月から2023年までの3年間で、米国内の約166万人に及ぶ外来患者における約17億件の臨床記述を評価し、その平均文字数を算出している。その結果、平均文字数は2020年5月の4,628文字から、2023年4月時点では5,002文字へと8.1%増加していることが明らかになった。その一方で、記録1件あたりに費やす平均時間は同期間において5.4分から4.8分へと11.1%減少している。

また、全体の約40%の医療機関では3年間で平均文字数が減少し、記述を削減した上位10%の医療者は、プライマリケア・内科・外科・皮膚科・循環器科・精神科など幅広い専門領域に渡っている。このことは、どの専門分野であっても記述量の短縮が可能であることを示唆している。同レポートによると、「スマートツール」や「コピー&ペースト」を頻繁に使用し、カルテ内の別の箇所から簡単にメモ内容を転記・追加できる医療機関ほど、記述量が増加しているという傾向が確認された。

これらのデータから、「評価および管理(E/M: evaluation and management)」の制度変更は、医療者の認知的負担の軽減や文書作成効率の向上など、医療者の満足度に対して一定の利益をもたらしている、と同レポートでは考察している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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