デジタル機器による心拍モニタリングは、スマートフォンやウェアラブルデバイスの出現により飛躍的に進歩し、無症状でありながら治療可能な不整脈の検出において有効な手段となっている。しかし「機器からのフィードバックにどう対応すべきか」について、明確な指針や管理計画がなければ、混乱と不確実性を生むとの懸念がある。「どのような患者が、どの技術を、いつ使うべきか」について国際的な合意を経た臨床医向けの指針が、欧州心臓病学会(ESC)の機関誌 Europaceに3日付で公開されている。
同文書は、ESCのブランチとなる欧州不整脈学会(EHRA 2022)でも発表講演が行われている。本文中では、心電図パッチ・スマートウォッチ・アームバンド・チェストストラップ・指輪・イヤホンなどあらゆるウェアラブルデバイス、および生体認証アプリを組み込んだスマートフォンなどの携帯端末といった、全ての新規デジタルデバイスが対象とされている。その上で、これら機器で得られた異常所見は「心臓不整脈専門医や循環器専門医を含むチームで評価すべき」であり、また、一般消費者向けの機器による測定のみでは診断に不十分で、臨床用心電図検査での確認を必須とした。そして、脳梗塞リスクが高い75歳以上、または65歳以上で高血圧・心疾患・脳卒中の既往がある者は、デジタル技術を用いた心房細動のチェックとスクリーニングについて、医師と相談すべきとしている。一方で、各規制当局の承認を受けていない市販デバイスによって、医学的に必要性のない人々が常に心拍をモニターすることは避けるべき、とのアドバイスも付記されている。
ESCのインタビューに対し、筆頭著者でスウェーデン・カロリンスカ研究所のEmma Svennberg氏は「パンデミックの状況下では、カメラやスピーカーによる非接触モニタリングも増え、将来的に有用となる可能性がある。AIなど高度な統計手法によってデバイスから得られる長期間データの解釈も改善されるだろう。今後、デジタルデバイスの臨床目的における普及と適正利用のためには、当初から患者が参加し、ユーザーを念頭に置いたデバイスの設計を行う必要がある」と語った。
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