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心電図と臨床スコアから心房細動リスクを捉えるAIシステム

米マサチューセッツ総合病院、マサチューセッツ工科大学ブロード研究所、ハーバード大学などの研究チームは、心電図画像および臨床的リスクスコアから「心房細動の発症リスクが高い患者」を高精度に特定するAIシステムを開発した。研究成果はCirculation誌からこのほど公開されており、予防的施策への多大な貢献が期待されている。

心房細動は不整脈の一種だが、血栓形成とそれに伴う脳卒中リスクのため、積極的な治療が必要となる循環器領域の重要疾患だ。本研究論文によると研究チームは、マサチューセッツ総合病院に受診歴のある45,770人の患者における12誘導心電図データをもとに、今後5年間の心房細動発症リスクを予測する畳み込みニューラルネットワークをトレーニングした。これを83,000人以上に及ぶテストセットで検証したところ、AI単独ではAUC 0.823、さらに臨床的リスクスコアであるCohorts for Heart and Aging in Genomic Epidemiology AF(CHARGE-AF)と組み合わせたところ、0.838までの向上を確認している。

研究チームは「AIを用いた12誘導心電図の解析は、心房細動の発生に対する臨床的リスク因子モデルと同様の予測有用性を有し、両アプローチは互いに補完的である」と結論付けており、本システムが将来の心房細動リスクを効率的に定量化できる可能性があるとして、研究の発展と臨床実装への期待を示している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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