がん治療はメニューの多様性と患者背景に沿った最適化のため、治療費用の個別的な見積もり導出には煩雑な手作業が必要となり、容易ではない。患者側にとっても気軽に経済的な相談ができない状況も起こりやすい。シンガポール国立大学がん研究所(NCIS)は、同国発の医療AIスタートアップ「Bot MD」との提携で、がん患者の金銭的カウンセリングを改善する化学療法・がん治療費計算機「NCIS ChemoCalc」の提供を開始した。
Bot MDの発表によると、NCIS ChemoCalcは治療費を最適化する独自アルゴリズムによって、処方されたがん治療薬、患者の在留状況、補助金(means-testing)、各種政府助成制度の適用資格に基づき、患者の毎月の自己負担金額を即時に見積もることができる。費用対効果が高い薬剤の組み合わせを検出するため、ジェネリック医薬品やバイオシミラー医薬品の代替品がある場合には、スタッフに強調表示する機能などを備える。ChemoCalcは薬剤師・患者サービス担当・事務スタッフ・ソーシャルワーカー・医師から構成されるNCIS現場スタッフがBot MDと共同で開発した。現場の意見を取り入れることで、簡単なドロップダウンメニューからオプション選択が可能となるなど、シンプルで直感的なユーザーインターフェースが構築されている。今後、国や医療機関の価格改定に合わせて、支払いと推定費用が一致するようにシステムの更新が続けられる。
NCISのソーシャルワーカーであるAlexis Koh氏は「がんの旅路のナビゲートは、患者やその愛する人々にとってむしろ負担となる場合がある。ChemoCalcを使うことで、治療費目安、月々の自己負担額、政府補助金などをすぐに知ることができ、金銭的に困難な場合はソーシャルワーカーにも相談できる。これらに関連したストレス要因をできるだけ軽減することで、患者が治療に専念できるようにしたい」と語った。
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