医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例AIミリ波レーダーで皮膚に触れずに動脈硬化を多部位同時計測

AIミリ波レーダーで皮膚に触れずに動脈硬化を多部位同時計測

動脈硬化の客観的指標として注目される脈波伝播時間(PTT)は、従来、接触型センサーで単一部位のみ測定するのが一般的だった。しかし、中枢と末梢の硬化度の差を捉えるには複数部位の同時計測が不可欠であり、非接触かつ単一デバイスでの多点測定が課題であった。米国の研究チームらは、AIをミリ波(mmWave)レーダーを組み合わせたシステム「PolyPulse」を開発し、心臓から橈骨動脈、頸動脈、および乳様突起から橈骨動脈の3経路で同時に非接触PTT計測と拡張期血圧推定を実現した成果を、Nature Communicationsに発表した。

同システムは約3mmという微小な橈骨動脈幅も分解できる1.4度の角度分解能を達成した。深層学習モデルには、微小な脈波信号を複数部位から同時に検出し、ノイズに埋もれた心臓波形の正確なタイミングを推定するために、空間プーリングブロック、双方向LSTMを組み込んだ畳み込みエンコーダ・デコーダ、そして複数部位間の心臓波形情報を融合するクロスリージョン融合モジュールが使用された。47名を対象とした臨床試験では、各PTT経路において接触型センサーとの相関係数0.75〜0.86を達成。拡張期血圧推定では相関係数0.90〜0.91、平均誤差−0.62〜0.06 mmHg、標準偏差4.54〜5.20 mmHgを記録し、米国医療機器振興協会のFDA向けの基準および英国高血圧学会の基準を満たした。

著者らは、PTTは部位ごとに異なる動脈硬化や血管負荷を反映するため、単一レーダーで複数経路のPTTの多部位同時計測は全身の血行動態をより包括的に把握できる可能性がある、と述べている。また、衣服越しでも測定可能で、装着型デバイスのような皮膚刺激を回避できる点も利点とされる。今後は下肢動脈も含めた全身計測への拡張と、より多様な心血管疾患患者を対象とした大規模検証にて、在宅での長期心血管モニタリングへの応用が期待される。

参照論文:

Measuring multi-site pulse transit time with an AI-enabled mmWave radar

関連記事:

  1. AI駆動による「高血圧の個別化治療戦略」
  2. 「Dot-to-Dot」血圧の点と点を結び行動変容を促すAIアプリ
  3. 10秒のカメラ撮影で非接触血圧測定

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください

本吉絢
本吉絢
東京女子医科大学卒(MD)、同大学医学研究科博士課程修了(PhD)、米University of Washington研究員を経て、現在は神戸アイセンターにてリサーチアソシエイトとして眼科AI研究に取り組む。趣味は自然と猫や馬など動物たちを愛でて静かに過ごすこと。
RELATED ARTICLES
spot_img

最新記事

注目の記事