米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UC San Diego)の研究チームは、4D AIモデルと物理ベースの「デジタルツイン」を組み合わせた「仮想細胞」を構築し、細胞内のミトコンドリアが薬物治療にどう反応するかを精緻に予測する技術を開発している。同大学が明らかにしたところによると、細胞の動的なプロセスを模倣するデジタルモデル作成のため、ミトコンドリアなどの微小構造物が時間経過とともに3次元空間で動く様子を捉える「4Dラティスライトシート顕微鏡」技術が用いられたという。
Cell誌に掲載された1つ目の研究では、25種の化合物で処理されたがん細胞の4D動画4万本を用い、深層学習AIモデル「MitoSpace」を開発。同モデルはミトコンドリアの形状と動きのみから細胞のエネルギー状態の予測に成功した。さらに、薬物を作用機序ごとに分類する識別精度において、従来の2D画像を用いた場合(56%)に対し、4D動画で訓練された同AIモデルは75%の精度を達成した。同じくCell誌に掲載された2つ目の研究では、実際の細胞の4D動画データを基に、物理ベースの「デジタルツイン」を構築。ミトコンドリアとそれが移動する微小管の配置をマッピングし、物理法則を組み込んだこの仮想モデルに薬剤投与時の反応を予測させたところ、実際の細胞における挙動(動きの低下や融合・分裂率の変化等)をパラメータ調整なしに正確に再現した。
ミトコンドリアは細胞の健康状態に応じて形状を変化させるため、疾患マーカーや新薬検証に極めて有用だ。今後はAIとデジタルツインを統合し、組織全体をシミュレートすることが計画されている。がんや糖尿病、アルツハイマー病等の創薬プロセスを大幅に加速させる可能性が高く、研究発展への期待は著しく大きい。
参照論文:
関連記事:
