インフルエンザ感染に最も有効な手段のひとつとしてワクチン接種がある。しかし死亡者の発生を完全に防ぐにはなかなか至っていない。そのワクチン開発をさらに一歩先に進めたのはAIであった。豪フリンダース大学のチームから、世界で初めてAIが完全に設計したインフルエンザワクチンが開発され、従来のワクチンよりも高い有効性が期待されている。
豪メディアScienceAlertによると、同チームは、SAM(Search Algorithm for Ligands)と呼ばれるAIアルゴリズムで、免疫を活性化させるのに最適な化合物を設計し、インフルエンザワクチンを開発した。米国国立衛生研究所(NIH)に属する国立アレルギー・感染症研究所から資金が提供され、米国全土で12か月間の臨床試験を開始している。実験では従来のコンピューター設計のワクチンを上回る効果が確認されており、ヒトでの効果を立証したい構えだ。
フリンダース大学は、2009年に新型インフルエンザの世界的流行の中、優れた豚インフルエンザワクチンを開発したことで名を上げた。しかし、そんな同大学でも、オーストラリア国内で研究助成金を受けることは非常に困難であったという。オーストラリアは新しい薬や治療法の開発実績が国際的にはあまり多くないと言われる。国内の資金助成の大半は大規模研究機関に限られ、大学病院をベースとした研究はしばしば資金難となる。そういった状況の中、研究チームは活路を米国NIHに求め、今回の画期的な成果を生み出した。医療でのAI開発が世界的に盛り上がる中でも、地域差を感じるとともに、優れた研究が日の目を見た興味深いエピソードである。