術中迅速病理診断で医師を上回るAI

米ミシガン大学を中心とした研究チームは、脳腫瘍に関する術中迅速病理診断で、AIが病理専門医をやや上回る精度を示したことを明らかにした。研究成果は学術誌Nature Medicineで6日、レター論文として公開されている。

英国のオンラインペーパーIndependentが今日報じたところによると、チームの構築した画像診断AIは病理専門医による診断精度を1%上回ったという。ただし、従来の20分から30分を要した診断手順に関しては、2分30秒未満へと劇的な短縮を実現している。研究者らは「人が病理検査室で行うプロセス」と「実験的AIによるプロセス」が結果に対して異なるバラツキがあることを指摘し、病理専門医とAIが協調することでより高い精度を導ける余地があるとしている。

手術中の限られた時間内に病変部が悪性かどうか、転移や取り残しがないかを的確に知るには病理組織的な視点が欠かせない。一方で、通常の病理検査とは比較にならないほど短時間で行われる術中迅速診断では、組織標本の質も低いため診断自体が非常に難しい。AIによる診断医へのサポートは、精度担保・向上に寄与する現実的手段として期待が高まっている。

TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事