新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大は、危機管理にとって重大な教訓が多く含まれるが、そのひとつに「正しい情報伝達の確保」がある。一般市民においても「データ解釈とそれに基づくリスク判断の難しさ」を強く認識する現状がある。
AIアルゴリズムを用いたハイリスクポピュレーションの同定や、感染症疫学に基づく死亡率推計・感染拡大シミュレーションなど、インパクトの大きい成果が日々示される一方、科学的知見を過不足なく日常言語に置き換える「科学技術インタープリター」の存在が不足する。一面的な研究成果の紹介とその限定的な解釈によって、市民の危機感が過度に煽られる、または不必要に楽観視させることはいずれも望ましいとは言えない。
現在、国内では東京大学の大学院副専攻カリキュラムとしての科学技術インタープリター養成プログラムなどが存在するが、その育成環境はまだ十分ではない。高度専門技術・知識と一般社会を繋ぐ架け橋が今強く求められている。