PM2.5への曝露が健康影響と密接に関連することは明らかにされており、地表におけるPM2.5濃度の正確な推定が欠かせない。地上における監視ステーションがカバーする領域は限定的であるため、多くの関連研究は人工衛星からの情報に基づいたものとなっている。
人工衛星によって捉えたエアロゾルの光学的な厚さ(AOD)から、地上で測定されるPM2.5濃度を機械学習によって推定するのが現在の主要なアプローチと言える。ただし、モデルの不確実性によってPM2.5濃度の推定には相当量のバイアスを内包する可能性が指摘されており、慎重な結果の解釈が求められてきた。このほど、中国・武漢大学の研究チームがChemosphereに公表した論文では、データの空間パターンを考慮した新しい検証方法を提案している。気象衛星ひまわりから送られるAODの経時データを利用し、広く用いられる2つの機械学習モデルで検証を重ねたところ、従来の検証方法では、中国におけるPM2.5濃度の推定パフォーマンスを過大評価する可能性が高いという。
PM2.5の健康被害を回避するためには、1立方メートルあたり70μg超(環境省による)といった高い濃度を示す際に、マスクを着用する、不必要な外出を控える、換気を最小限にするなどの配慮が必要となる。ただし、COVID-19のパンデミック下においては逆に十分な換気が一律に求められているため、状況ごとの適切な対応を促すためには正確なPM2.5濃度予測とその周知が肝要となる。