がん患者へのAIによるリスク層別とその経済効果

救急治療室の受診はその66%もが回避可能とされる一方で、平均コスト2,032ドルによって米国医療費にとって年間320億ドルもの負荷を上乗せしている(参照論文)。そういったなか、がん患者による救急治療室受診も主要な割合を占めており、適切なリスク層別による不要受診の回避が求められてきた。

Healthcare Financeが19日報じたところによると、米国テキサス州に所在する「がん・血液疾患センター(CCBD)」ではAIシステムを利用し、がん患者のリスク層別を通した不要な救急治療室受診の回避によって、医療提供者と患者双方の時間・費用の節約を実現しているという。CCBDが導入するAIシステムはJvionが開発したもので、患者情報から4,000に及ぶ変数を取り込み、状態の悪化や救急治療室を受診するリスク、入院リスク、精神疾患リスク、および30日以内の死亡リスクなど、多面的な結果をまとめた週次レポートを送付する。システムは医師に対し、この中で特に問題があると特定される患者のアラートを送るとともに、原因となる特定の要素を解決し得る臨床オプションも提示する。

技術は3年前に実装されたが、当該AIシステムの導入後、約300万ドルのコスト削減に成功しているという。種々のベンチマークで特に改善がみられたのは、最終的な患者転機・うつ病の識別・ゲートキーパー機能の強化とのこと。実際、CCBDはがん患者における疼痛管理とうつ病治療のために専門医を紹介するケースが有意に増加した。CCBDを率いるRay Page医師は「AIが患者管理における相加的な役割を果たし続ける」ことを強調している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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