COVID-19をきっかけに大規模な国境封鎖措置をとった各国は、渡航再開にあたってどのように入国者の感染をチェックするか検討を求められた。多くの国々ではリソースの限界などを理由として、全ての入国者、特に無症候の者を即時検査するという選択肢を取ることができなかった。このようななか、ギリシャはAIを活用した入国者監視を行っており、その成果が学術誌 Natureに発表された。
Nature誌によると、ギリシャ当局は2020年8月から11月にかけて機械学習アルゴリズムを用いて、COVID-19の検査を行うべき入国者を決定するシステム「Eva」を立ち上げた。搭乗者情報を参照することで、渡航歴だけではなく、年齢や性別を含む属性データ等に基づき構築された機械学習アルゴリズムは、従来のランダム検査と比較して1.85倍、出身国などに基づくリスク指標と比較して1.25~1.45倍の無症候感染者を特定することができた。また観光シーズンのピークには、ランダム検査と比較して2~4倍の感染者を検出できた。この結果は「従来型の国境管理政策の有効性について重大な懸念を抱かせる」と著者らは述べている。
この政策決定は、米南カリフォルニア大学でデータサイエンスを専攻するギリシャ出身の研究者 Drakopoulos氏が、Mitsotakis首相とタスクフォース責任者に向けて、アドバイスが必要かどうかメールで問い合わせた数時間後に、首相から直接返信を受けたことを発端とする。政策立案者の熱意に後押しされ、Drakopoulos氏の意見を取り入れながら開発されたEvaシステムは、AIとリアルタイムデータが水際対策への有効性を示した事例として、各国にとって重要な示唆があるだろう。
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