近年、AI技術の医療への導入は急速に進み、多方面で実用化されているが、現場で働く医師や、その他医療専門職に対するAI教育はほとんど進んでいない。米ボストン大学医学部では、世界に先駆け、医学生や若手医学研究者向けに、機械学習に関する基本教育のコースを提供開始した。医学教育における世界的スタンダードとして、AI科目が取り込まれる日は来るのだろうか。
米医療メディアDAICによると、機械学習を用いた医学論文が、ここ数年膨大に公開されているにもかかわらず、医学生に対するAI教育の必要性を取り扱った論文数は、2010年以降大きな数の変化はなく、ほぼ見逃されているようだ。ボストン大学医学部のVijaya Kolachalama博士は、「一般人でさえ医療におけるAI技術の重要性に気付いているが、将来実際にこれを取り扱い、患者治療に用いるはずの医学生に対する教育はまったく進んでいない」と危機感を示している。
GoogleやMicrosoftといった最大手企業が、率先してAI技術の医療分野への応用を進めるなか、医療現場からの伝統教育を脱した動きもみられている。アメリカ医師会によると、米デューク大学では、AIを用いた医学研究を医学生に行わせる試みが始まっている。Mark Sendak医師は、「早期から先端技術を利用させることで、未来のリーダーを育てている」と自信を示す。AIに関する基礎教養が医学生の常識となる日も、そう遠くはないはずだ。