医療のあらゆるプロセスのなかでも、人の死というフェーズには最大限の敬意が払われ、常に尊厳に満ちたものであるべきだと広く考えられてきた。近年、AIは人の死期を予測し(過去記事)、また脳死判定を高精度に行うなど、AIが人間の死を予測・定義する時代の到来さえ予感させている。
Medical News Todayの報道によると、慢性疾患罹患に伴う死亡リスク予測を、個人・環境因子まで含めた機械学習アルゴリズムで検討したStephen Weng氏は、予防医学領域へのAI利用として成果の重要性を強調している。一方、米WIREDは記事中で「AIは人の死を予測し得る。だがもし、アルゴリズムがバイアスを持っていたら?」と潜在的な問題点を問う。特にアルゴリズムのトレーニングデータセットに含まれない人種・民族・性別などにおいて、著しく偏った結果を示すことはこれまでもしばしば問題視されてきた。
医師であり、ヘルスケアにおけるAIについての執筆で世界的に知られるEric Topol氏は、米TIME誌のインタビューで「アルゴリズムは偏らない。ただし、人がアルゴリズムに投入するデータは偏る可能性がある」とし、ヘルスケアAI開発に対する一定の基準確立を求め続けている。人の死さえAIが取り扱う時代、もはや避けて通れない議論が目の前にある。