新型コロナウイルスのパンデミックを受け、がん患者の50.7%が不安症状を呈し、46.8%がうつ病に罹患している事実も報告されている(参照論文)。そういったなか、米テキサス州に所在するがん治療専門病院「Center for Cancer and Blood Disorders」では、がん患者におけるメンタルヘルス管理にAIを積極利用する試みが始まっている。
採用されたAIシステムは臨床AIのプロバイダーであるJvionによるもの。Jvionは、職業や収入、年齢、食事摂取状況など社会経済的因子に基づく「コロナ脆弱性マップ」の公開でも昨今大きな注目を集めた。今回Center for Cancer and Blood Disordersに導入されたAIシステムでは、この社会経済的因子に臨床因子を加え、6ヶ月以内の患者リスクを層別化(医療機関受診/うつ病発症/要内服治療/死亡、など)するものであるという。Health IT Analyticsの取材に対し、同センターのRay Page氏は「我々の機関には、リスクの高い患者をレビューして特定するケースワーカーがいる。彼らによる介入が順調であるかを確認し、より良い転機を得るためにもAIが有効に活用できる」としている。
国・地域を問わず1日数十人を診察することが一般的である臨床医にとって、1患者あたりの短い診察時間内に、疼痛や嘔気などの明確な臨床症状「以外」を適切に把握することは容易ではない。各患者が背景として持つ社会経済的因子を含む種々のリスクを自動評価し、ハイリスク者をハイライトするAIシステムは、医療の質的改善を直接促すものとしての期待が大きい。