結核がヒトに蔓延したのは、太古の歴史上でウシを家畜化し、ウシの結核(bovine tuberculosis)から人獣共通感染を起こしたものがヒトの結核菌に変化したと推定されている。現在のウシ型結核菌は、感染したウシの低温殺菌されていない牛乳あるいはチーズなど加工食品からヒトに感染することもあるが、衛生技術の進歩した国では極めてまれである。
ウシの結核はウシ同士での感染力は高く、病期が後期に進行するまで感染兆候は発見しにくく、現在標準の定期的なウシ用のツベルクリン検査は手間のわりに50-80%程度の識別率で、ウシの結核に対する畜産業界での管理コストは課題とされてきた。
Open Access Governmentが報じたところによると、エジンバラ拠点のスコットランドルーラルカレッジ(SRUC)ではNVIDIAのGPUを用いて、定期的な生乳サンプルの画像データから畳み込みニューラルネットワークで感染牛を識別するモデルを開発した。画像データ収集には中間赤外線分析(MIR:Mid-infrared spectroscopy) という手法が用いられている。同モデルはツベルクリン検査で不合格となるウシを精度95%・感度96%・特異度94%で識別できた。
日常的に採取した生乳サンプルからの結核感染牛の特定は、モニタリング方法として時間とコストの大幅な削減を可能とし、さらには非侵襲的でもある。このようなAIツールによって、英国および諸外国におけるウシの結核の根絶に貢献する可能性が期待されている。