AIチャットボットとの会話が、不安や抑うつ症状の軽減に役立つという報告がある。しかしこれら研究の多くは英語圏で行われていた。スペイン語圏であるアルゼンチンの大学生を対象としたメンタルヘルス向けチャットボット研究が、米パロ・アルト大学のグループから発表されている。
JMIR Formative Researchに掲載された研究では、18~33歳までのアルゼンチンの大学生181名を対象として、メンタルヘルス・チャットボット「Tess」が使用され、不安障害と抑うつ症状が追跡された。8週間の追跡期間を通して、学生とチャットボットTessとの間では平均472通のメッセージが交換され、平均116通がユーザーからTessに送られていた。結果として、Tessと交換したメッセージの数が多いほど、8週目に学生から肯定的なフィードバックが得られた(「私を理解してくれている」「話してくれてありがとう」「不安が減って自信を持って外に出られる」)。不安と抑うつについて、介入群と対照群で有意差は認められなかった一方、介入群の群内では不安症状の有意な減少が認められたが、対照群ではそのような傾向は確認されなかった。
群間で有意差が認められなかった理由のひとつに、英語圏からスペイン語圏へのローカライズで、本来のアプリが持っている介入の質が低下してしまった可能性が挙げられている。しかし、ラテンアメリカでのメンタルヘルスチャットボット研究は前例が乏しく、今回の研究成果はアルゼンチンにおけるTessの使いやすさと受け入れを示す十分な証拠となったと、研究グループでは考察している。AIチャットボットがメンタルヘルスケアに有効というエビデンスは、研究のさらなる進展により、言語圏の壁を越えて強固なものになっていく可能性が高い。
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