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データセットの「量と特異性」を組み合わせるAI創薬研究

同じ組成の化学物質に異なる結晶体が存在することを「多形(Polymorphs)」と呼ぶ。その違いが薬剤の効能に関わるため、創薬分野では多形体データが収集されてきた。製薬会社が独自に収集したデータセットと、公開データセットを組み合わせ、新薬候補として利用できる新たな多形体を予測する機械学習モデル研究が発表されている。

英国のケンブリッジ結晶学データセンター(CCDC: Cambridge Crystallographic Data Centre)のリリースによると、同センターが公開している「ケンブリッジ結晶構造データベース(CSD: Cambridge Structural Database)」と、グラクソ・スミスクライン社(GSK)の独自データセットを組み合わせ、多形体を予測する機械学習モデルが構築された。CSDには過去100年間にわたって収集してきた結晶構造110万件以上、GSK社には医薬品パイプラインにおける種々のフェーズで収集された過去40年間のデータが登録されており、研究成果はCrystEngComm誌に報告されている。

AIモデルはデータの「量」と「特異性」という2つのポイントから恩恵を受ける。CSD側の大量のデータはより信頼性の高い予測につながる。一方でGSK社の独自データセットには、製薬会社として創薬に有利になるよう探索してきた産業界の文化的意思決定が反映されている。CSDとGSKのデータセットを組み合わせることで双方の長所を取り入れられることを本研究では実証しており、データセットの相互補完は業界でのトレンドとして続くことが想定される。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。
The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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