大腸がんは米国で年間53,000人以上の死亡者があり、がん死亡の第2位に記録される。しかし、大腸がんの死亡率は着実に低下してきており、その一因にはがん検診プログラムによって前がん病変のひとつ「大腸ポリープ」を検出し切除することが寄与してきたと考えられている。切除された大腸ポリープは、病理組織スライドでチェックされ、経過観察計画のため組織学的に分類される。大腸ポリープの評価においても、病理医間の診断のばらつきを低減し精度を向上させるため、AI拡張デジタルシステムが実用に近づいている。
米ダートマス大学ノリス・コットンがんセンターのリリースでは、同施設を中心に行われた研究「AI拡張デジタルシステムによる大腸ポリープの組織学的分類」を紹介している。JAMA Network Open誌に掲載された本研究は、15名の病理医による大腸ポリープ評価で、「顕微鏡評価」によるパフォーマンスと「AI拡張デジタルシステム使用」によるパフォーマンスが比較された。その結果、各病理医が100枚のスライドを評価する際に、大腸ポリープの分類精度が、顕微鏡単独評価の73.9%に対してAIシステム使用で80.8%に有意に向上していた。スライド1枚あたりの評価時間は、システムに不慣れなことから当初はAIシステム21.7秒、顕微鏡で13.0秒という差が生じたが、その差は経験を積むにつれて減少し、最後のスライド20枚で4.8秒の差にまで短縮した。
研究チームは「病理医が診断する際の精度・効率・一貫性を向上させるAIアプリケーション開発」を目指し、さらなる臨床試験に取り組んでいる。ツールの臨床現場への適用で、大腸ポリープ切除後の管理計画が適正化し、内視鏡検査の過剰と過小が是正され、患者の転帰改善と医療コスト削減へとつながっていく将来像が期待されている。
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