ChatGPTが「論文著者となること」について

ChatGPTの登場により、あらゆる領域で大規模言語モデルの可能性が熱い議論を呼んでいるが、当然、ヘルスケア・ライフサイエンス領域も例外ではない。

マサチューセッツ総合病院・ハーバードメディカルスクールの研究チームは、米国の医師資格試験であるUSMLEの3つのコンポーネントをChatGPTがパスしたとして、プレプリント論文をmedRxivから公開し、話題となった(「Performance of ChatGPT on USMLE: Potential for AI-Assisted Medical Education Using Large Language Models」)。

また直近では幾つかの学術論文において、ChatGPTが「著者として」クレジットされたことも有識者の議論の的となっている。これについて権威ある学術誌のエディターらが声明を出しているが、Science誌のHolden Thorp氏は「我々はAIを著者として記載することは許さず、適切な引用なしにAIが生成したテキストを使用することは、盗用とみなされる可能性がある」としている。

ChatGPTの著者性についてはユーモアや学術的な陶酔があったにせよ、特に安全性が要となる領域においては、致命的なミスリードがエビデンスの集体に組み込まれぬよう、適切な評価フレームワークを慎重に開発し、備える必要があることは間違いない。

関連記事:

  1. 大規模臨床言語モデル「GatorTron」
  2. 大規模言語モデルが臨床記録の解読に貢献する
  3. 量産されるCOVID-19関連論文 – プレプリントについて
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事