産後出血は、米国における妊産婦死亡の主要原因である。過去15年間で産後出血による死亡率は概ね一定だが、有病率は増加している(産後出血の定義により3〜9%増)との報告もあり、死亡を防ぐための取り組みが引き続き重要となっている。産後出血は定義があいまいで、目視による出血量の推定に大きく依存してきたため、不正確で不完全な表現が用いられてきた。より正確な産後出血の「デジタル表現型(digital phenotype)」を確立するためのAI研究が、米マウントサイナイ病院から発表されている。
Journal of the American Medical Informatics Association(JAMIA)に発表された同研究では、マウントサイナイにおける71,944件の分娩に対して、機械学習手法によって電子カルテデータ(出血量記録・ヘマトクリット値変化・子宮収縮剤投与・外科的介入・診断コード)を解析し、産後出血の正確なデジタル表現型を特定しようとした。その結果、本研究の表現型では6,639件(有病率9%)の産後出血が確認され、出血量記録のみを用いた場合における1,747件の3倍以上となった。チャートレビューによって本研究での表現型は精度89%との結果が示され、従来の精度(出血量に基づく定義で67%、過去に発表されたデジタル表現型で74%)を有意に上回っていた。
この結果は従来の産後出血の確認において、「電子カルテから容易に入手できる補完的な情報が無視され、リスク推定が偏っていた」ことも示唆している。研究チームは、「正確で有効なデジタル表現型を開発することで、産後出血の予防的介入をより効果的に行うための臨床研究等に対して、重要な役割を果たす可能性がある」と結論付けている。
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