「エイジズム(ageism)」は、年齢に基づいた様々な差別の総称で、高齢者に対する年齢を理由にした無意識の決めつけ、レッテルの貼りつけなどが該当する。豪モナシュ大学の研究チームは「高齢者介護施設へのAI導入がエイジズムや社会的不平等を悪化させる可能性」について調査している。
Journal of Applied Gerontologyに発表された同研究では、豪州の高齢者介護施設を舞台として、AI開発者やケアスタッフ、支援技術者へのインタビューから質的研究を行った。その結果、開発者・スタッフの双方は、高齢者に対して「依存的、無能力、技術に無関心」などといった潜在的な想定から技術およびサービスをデザインしていることが示された。このような偏った先入観やモノの見方を論文内では「社会技術エイジズム(sociotechnical ageism)」と定義している。すなわち、「高齢者のための技術を選択する側の人々が差別を発生させ、既存の社会的不平等を悪化させる可能性がある」と研究チームでは論じている。
著者のBarbara Barbosa Neves氏は「高齢者ケアにAIを導入する場合、単独のソリューションとしてではなく、ケアサービスの一部として考慮する必要がある。技術の利用には、高齢者の幸福・自律性・尊厳に与える潜在的な影響を考えなければならない」と語った。
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